葉 山 の ゲ ス ト ハ ウ ス
Hayama Guesthouse
葉山のゲストハウス
葉山の海に隣接したこの地域では、宅地―松林―砂浜といった領域が道路などの境界線で分断されることなく、海へと自然に連続していく景色を見ることができる。日本の海岸の原風景ともいえる景色の延長線上にあるので、この敷地に立っても砂浜や直接視界に入らない海へと土地がつながっていく連続性をイメージできる。
以前よりここに別荘を所有されていたクライアントは、友人たちを多数集めてカヤックなどの海遊びやパーティーを行っていたが、さらにそのための空間を拡充するため、隣地にゲストハウスを建てたいということだった。要求事項の要点は、海用品の収納空間および軒下テラス空間の確保と内外部の境界をなくしたいという点。パーティー時に内外を自由に動け、主人客人が入り混じって調理や飲食ができると、裏方役に徹してしまう人が出ず、皆で一体的に楽しむことが出来るというわけである。庭は既存別荘(主屋)の庭と一体につなげ、さらに広がりのある使い方も可能とさせる。
まずは内外部を共通の土間として敷居をなくして床を連続させる。さらにテラス戸をフルハイト(天井高まで)の全開引戸として天井も内外で連続させ、境界を感じさせないようにする。この連続する天井面という水平面と海の景色との類似性を感じた時、この建物の方向性が見つけられた気がする。明るい軒下空間を確保するためのトップライトは、横に引き通して天井面と2階テラスの床面に水平線を描く。同様の水平線は内部において階段部のスリット状の吹抜けやスポットライトを仕込むための折上天井として天井面に繰り返され、また2階においてはテラスのデッキのパターンとして反復される。こうして抽象化された海の景色のごとく、要素を水平線とその繰り返しに収斂されていくようにした。
海はどこまでもつながる連続性や繰り返し反復の永続性を表すものであるから、その方法は内外の境界をなくすということから出発した家のつくり方として自然ではなかったかと思う。
所在地 神奈川県葉山町 建築設計 八木建築研究所
主要用途 別荘のゲストハウス 構造設計 草間構造設計室
構造規模 木造 地上2階 施工 直営
敷地面積 130.13m² 竣工 2009年12月
延床面積 72.09m²